「あなたたちは嘘ばっかり!『事故は起こさない』なんて、何が信用できるの?子どもの、孫の命をおびやかす根元がここにある!」〜紳士協定は破ってもいいと言い切って建設された伊方3号機が約5年ぶりに再稼働 

▲抗議の市民たちが見つめる中、再稼働の朝を迎えた四国電力伊方原子力発電所

 日本列島を東西に貫く巨大な断層系である中央構造線。その真上に建つ原発が、再び稼働を始めた。
 愛媛県の西のはずれ、西宇和郡伊方町に位置する四国電力伊方原子力発電所が、2016年8月12日午前9時、約5年4か月ぶりに再稼働した。

 安全が確認されたわけではない。それどころか今年4月14日と16日に震度7をそれぞれ記録した一連の熊本・大分大地震が中央構造線に沿って起きたばかりであり、このレポートをアップした8月15日、直下の伊予灘を震源とする地震が起きた。伊方町は震度2だったものの、地震速報に触れるたび、ヒヤリとせざるをえない。
 2011年3月11日の東日本大震災により、東京電力福島第一原子力発電所で1・2・3号機が炉心溶融(メルトダウン)を起こし、1・3・4号機が水素爆発を起こしたその事故原因も解明されていないし、事故の収束もされていない。にもかかわらず、九州電力川内原発1・2号機、関西電力高浜原発3号機に続く4機目の再稼働(高浜原発3号機は裁判により仮処分決定を受けて現在停止中)である。
 もろい地盤、狭い敷地、逃げられない地形、危険なMOX燃料を使うプルサーマル発電。中央構造線の上に位置するだけでなく、南には南海トラフという、巨大地震が近いうちに発生することが確実視されている地震の巣がある。360度どの方向にも近隣に数十万都市が存在し、事故が起きて汚染されれば瀬戸内海は死の海になりかねないという場所に建つ。そんな「最も動かしてはいけない原発」を再稼働するために、愛媛県警だけでなく、広島や兵庫など「四国電力の管内ですらない」地域の機動隊まで動員して、住民の反対の声を圧殺した。
 再稼働の当日12日、不気味に水蒸気を上げ続ける3号機を見渡せる伊方原発のゲート前では朝7時から、地元はもとより日本全国より集まった市民が、再稼働に反対する声を上げた。

▲ 機動隊によって厳重に封鎖された伊方原子力発電所ゲート

▲福島をはじめ、福井、鹿児島、東京、広島、京都など全国各地から原発再稼働に納得できない市民が集まり、抗議の声をあげた

「あなたたちは1・2号炉しか作らないと住民に約束したじゃないか!あなたたちは嘘ばっかり!『事故は起こさない』なんて、何が信用できるの?」
 「チェルノブイリの事故の頃に子育てをした。健やかな成長を願う子ども達の口に、もしかしたら汚染されているかもしれないと思いながら食べ物を入れた。そしてこの伊方で出力調整があった。チェルノブイリが再びこの地に起こると思って反対した」と、スピーチを始めた女性はこう続けた。
 「本当に反対した。3号炉ができたのはその後だ。四国電力!覚えてますか?あなたたちは1・2号炉しか作らないと住民に約束したじゃないか!!あなたたちが、あの時の約束を守っていれば、私たちは今ここに立っていない!私たちの子供・孫の命をおびやかしているんだ!そして私たちはプルサーマルにも反対した!あなたたちは嘘ばっかり!!何が信用できるの?『事故は起こさない』なんて、何が信用できるの?私たちの命の声に耳を傾けろ!!」

▲「八幡浜・原発から子どもを守る女の会」のサポーターだという新居浜市に住む女性

 「子どもの、孫の命をおびやかす根元がここにある。私たちのあの辛かった思いを、二度と若いお母さんたちにさせたくない」と訴えたこの女性に、話を聞いた。
 「2号炉を作る時、四国電力と自治体は『3号炉は作らない』と約束したんです。でも四国中探しても、他に作る場所がなかったからここに作った。3号炉を作る時、住民が『協定があったじゃないか』と抗議したら、県が『あれは紳士協定ですから(破ってもいい)』と言ったんです。そういう経過でできたんですよ。ひどいでしょ!?作った時からおかしかった。チェルノブイリの事故が起こった後の話です」
「原子力規制委員会というのは、都合の悪いことは一切判断しない。あれは科学の委員会じゃないんです」
 「原子炉というのは、100パーセントのトラブル率の装置なんです」
 スピーチでそう話し始めたのは、福井県・若狭の「原発銀座」における反原発の中心人物の一人、理学博士の木原壯林(きはらそうりん)氏だ。氏は「再稼働にあたって、川内も高浜も伊方も準備中にトラブった。今から予言します。ここの原発は特に冷却細管のトラブルが、おそらくここ2週間の間に起こると思う。原発はそれだけ危ない装置だから、この予言はかなり当たる」と続けた。

▲理学博士・木原壯林氏

 「何しろこの原子炉はもともとウラン燃料用に設計され、それで再稼働審査を受けたのに勝手にプルトニウムを混ぜて運転している。プルサーマルというのは、制御棒の効きが悪くなり、運転が非常に難しくなる。それから配管が老朽化して薄くなっている。熱交換器の配管というのは非常に薄い。だから10年も運転すればかなり肉が薄くなっている。そして20年も経つと必ず細管破損が起こる。それが2次系・3次系ならまだマシだが、1次系であったら大事故につながる」
 原発の話は難しい。少し詳しく知ろうとすると、どんどん専門的な科学の話になってしまい、それがどうしても壁になって敬遠してしまう人も多いのではないだろうか。
 スピーチを終えた木原氏に、先ほど話した内容についてもう少しうかがってみた。
――プルサーマル発電が危険な理由は?
木原氏「プルトニウムはウランより重い元素なので、これを使うとより重いアメリシウムやキュリウムなどの元素ができやすいんです。これらの元素は、中性子を吸収しやすい。原発というのは中性子を制御して運転されているので、その量が変わってくると制御が効きにくくなるんですね。だから危険なんです」
――プルサーマル発電で使われるMOX燃料を作ることが、被曝労働の危険性を高めると聞きましたが、これはどういうことなんですか?
木原氏「プルトニウム自身はα線を出しますから、一番危険なのはウランとプルトニウムを混ぜてMOX燃料を作るときですね。α線というのは外からの被曝では大したことないんだけど、もし飲み込んだりすると内部被曝がものすごく大変なんです。本来、MOX燃料なんていうのは、よっぽどの管理区域じゃないと製造できるものじゃないんですよ」

▲ 木原氏は福井県・若狭の「原発銀座」における反原発運動の中心人物

――今回、一度7月に決まっていた再稼働が、事故によって一ヶ月延期されましたが、これはどういう事故だったんですか。
木原氏「伊方は加圧水型原子炉だから、原子炉圧力容器の中の水は三百数十度まで水のままでいます。その水のことを一次冷却水といいます。一次冷却水は燃料棒に直接触れているから、非常に放射能レベルが高い。この一次冷却水をポンプで循環させているんですが、非常に圧力が高いので、ポンプが水漏れを起こしやすいんですね。だからその上にもう一つ圧力をかけてシールド(封水)するためのポンプがいるんです。
 今回、そのポンプが水漏れを起こしたと、四国電力は言っています。ところが、その水がもし完全に漏れるようになってしまうと、(シールドが効かなくなって)今度は一次冷却水が漏れるようになってしまう、ということです。そういう意味でとても危ないんです。
 でも、それよりももっと怖いのは、冷却細管と呼ばれる熱交換のための非常に肉の薄いパイプです。何十年も運転しているとそれが減肉していて、穴が開く可能性が高い。川内も美浜も泊もこれで事故を起こしました。それが何万本もある。伊方でも一番危険性が高いのは、それだと思います。
 蒸気がタービンを回す。蒸気のままだと圧力容器の中に戻すことができないので、いったん水に戻す。蒸気を水にするために海水で冷やす必要がある。そこに穴が開くと、塩分を含む海水が漏れ込みます。すると腐食が早く進む。二次冷却水の所で腐食が進めば、一次冷却水の配管の腐食が進み、破綻して穴が開く。だから海水が入るというのは大変危険なことなんです」
――原子力規制委員会は、そういう危険性もわかっていて、新規制基準を設けているんですよね?
木原氏「わかっているけど、原子力規制委員会というのは、都合の悪いことは一切判断しない。なぜかというとね、規制委員会ってあれは科学の委員会じゃないんです」
――規制委員会の会見に出ると、田中委員長はよく『科学の観点から』などと話していますが。
木原氏「田中俊一は僕と同期に原研(※日本原子力研究所)に入ったから知っているけど、彼は原子力船むつの遮蔽計算をして、失敗した時の若手グループの一員だった。本来鉄で遮蔽すべきところを鉛でやって失敗したんです。年を取ってからは、ほとんど研究なんかしていません。
 それでね、科学というのは本来、いろんな起こった事象を丹念に調べて、検証して、議論して、結論を導くものだけど、今原子力で一番の事実というのは『福島で事故が起こった』ということなんですね。その検証も何もしなくて、何もわかっていないんですよ。それなのに安全審査をしている。あれを科学というなんてありえない。あれは科学者でもなんでもない。単なる安倍の提灯持ちですよ」
※日本原子力研究所
原子力に関する総合的な日本の研究機関。日本原子力研究所法にもとづき、日本の原子力平和利用の推進を目的として、1956年(昭和31年)6月に特殊法人として設立された。2005年(平成17年)10月1日核燃料サイクル開発機構との統合に伴い解散、独立行政法人日本原子力研究開発機構となった。略称は原研(げんけん)
(ウィキペディアより)
午前9時再稼働。「悔しい」と声を震わせる女性。ゲート前の放射線量は毎時0.16マイクロシーベルト
 午前9時。集まった100人ほどの人々が、盛んに水蒸気を上げ続ける3号機に向かって「再稼働反対!」と抗議の声を上げ続ける中、コールをリードしていた女性が「動きました!原発が動きました!」と叫ぶ。

▲ 午前9時、「制御棒が抜かれ、3号機が再稼働した」と発表された

 「原発止めろ!」と叫ぶ声の中、日よけテントの奥で涙を流す年配の女性がいた。斉間淳子(さいまじゅんこ)さん。「八幡浜・原発から子供を守る女の会」代表として、約40年にわたりご主人の故・斉間満氏と原発に反対する活動を続けてきた。満氏は八幡浜のローカル紙「南海日日新聞」(2008年5月休刊)の創設者で、地元の視点から伊方原発の問題を鋭く批判し続けてきた。
 その斉間さんが、帽子とタオルで顔を隠すようにしながら、「悔しい」と、何度も声を震わせていた。

▲再稼働の発表を受けて泣き出す「八幡浜・原発から子どもを守る女の会」代表・斉間淳子さん

▲約40年にわたって八幡浜市から伊方原発への反対を訴え続けてきた斉間淳子さん

 再稼働から1時間ほどのち、記者の隣にいた男性がカメラに向かって線量計の数字を示す。確認できた液晶画面の数字は、0.16。単位はマイクロシーベルト毎時。後から聞いた話だが、その場にいた別の市民が計った時には、毎時0.20マイクロシーベルトを記録したそうだ。
 「これはロシア製だから、かなり正確だよ」と話す男性に「このあたり、普段からこんなに高い値が出るんですか」と聞くと、「まさか。それはないよ。原発を動かしたからだ」
 環境省が出している放射性物質汚染対処特措法に基づく汚染状況重点調査地域の指定や、除染実施計画を策定する地域の要件が、「毎時0.23マイクロシーベルト以上」である。いかに高いかがわかるだろう。

▲再稼働後、ゲート前で放射線量計は毎時0.16マイクロシーベルトを示した

▲たとえ今回、再稼働を止められなくても、あきらめない。命をおびやかす原発に反対し、抗議の声を上げ続けていく

▲再稼働後も抗議参加者は増え続けた。午前10時、主催者により全国から集まった市民は約150人と発表された

熱弁をふるう菅直人元総理「電力会社がちょっぴり儲かるからということで、瀬戸内海を潰し、日本を潰す。そういうリスクがあることを、平気で放置するなんて、頭の細胞がメルトダウンしているんじゃないか」
 午前11時。菅直人元総理が到着する。スピーチ。炎天下、汗だくの熱弁。
 「安倍総理は福島原発を『アンダーコントロール』と言いました。大嘘ですよね。放射性物質をどんどん海に流している。ただ太平洋が広いから、薄まっているだけだ。今でも毎日毎日、たれ流しているんですよ。もし伊方原発が同じような事故を起こして、瀬戸内海にどんどん放射性物質を流したらどうなるか?
 瀬戸内海は狭い海峡に囲まれた内海なんですね。ですからその事故の影響は、瀬戸内海が死ぬことを意味している。愛媛県も香川県も山口県も広島県も岡山県も兵庫県も、この瀬戸内海が死んでしまうということに、もっと多くの人が危機感を持ってわかってもらいたい。
 この伊方原発、佐田岬は50km続くわけですね。段々畑の山沿いにたくさんの家があって、お年寄りが住んでいる。逃げられないんですよ、この町は。
 送電網が切れる。電源が喪失する。そしてメルトダウンが始まる。どうやって海に逃げるのか?陸の側に逃げようと思ったらこの原発のそばを通らなきゃいけない。
 逃げることができないんですよ、この立地そのものが。逃げることができないと、はっきりわかっている原発をなぜ、この愛媛県は県知事を含めて、止めようとしないのか。知事や首長の責任も極めて大きいと思います。
 鹿児島では三反園新知事が、地震が落ち着くまで川内原発を止めるように九州電力に申し入れると言っていますが、当たり前じゃないですか。そしてある意味その川内原発以上に危ないのが、中央構造線の真上にあるこの伊方原発じゃないですか。
 もしも事故が起きた時に、四国電力が責任持てるんですか?あの巨大な東京電力でさえ、福島原発事故の責任は全く取れていませんよ。国が6兆円貸し付けているから会社がもっているだけで、本来ならとっくに潰れているんです。政府でさえ、責任を負おうにも負えない代物なんです。これが原子力発電所・放射能の本質なんです」

▲午前11時、菅直人元総理が到着。30分に及ぶスピーチの後、記者による囲み取材が行われた

 菅直人元総理の熱弁はさらに続き、自身が総理の座にあったときに起きた福島第一原発事故に話が及んだ。
 「私も福島原発事故が起きるまでは、日本の科学技術は高いからチェルノブイリのようなことは起きないと思っていました。しかし実際に起きた福島原発事故はチェルノブイリどころではないですよ。福島の第一と第二を合わせて10機の原発、11の使用済み燃料プールがあるんですよ。これらが全部メルトダウンを起こすと、北半球は全滅するんじゃないかという人もいるんですよ。それを知った時、私はそれまでの考えを180度変えました。原発は1日も早くなくすべきだと。
 『飛行機だってなんだって事故は起きる。事故がゼロなんて無理だ』という人がいます。そうでしょうか?原発事故はゼロにできないでしょうか?簡単じゃないですか。原発をやめてしまえばいいんだから。地震をゼロにすることは今の人間の力じゃできません。原発事故をゼロにするのはできるんです。原発をなくしてしまえば、事故は起きようがないんです。こんなに簡単なことはない。その簡単なことをなぜやらないんでしょうか。
 せいぜい30年か50年、電力会社がちょっぴり儲かるからということで、瀬戸内海を潰し、日本を潰す。そういうリスクがあることを、平気で放置するなんて、ありえない。ここにいる皆さんの方が、まともな感覚を持っていて、『まだ使っても大丈夫だ』という人たちは、頭の細胞がメルトダウンしているんじゃないですか。

▲菅直人元総理「地震は人間には止められない。でも原発事故は止められる。原発を止めてしまえばいい」

 これまで動いていなかったプルサーマルの原発を動かした。MOX燃料の値段はウラン燃料の8倍から10倍。安いから使っているわけじゃない。政府がプルトニウム保有量を減らしたいだけなんです。
 そしてこの原発は稼働する前からプルトニウムが入っているんだから、こんな危険な原発はないんですよ。それを考えれば、伊方原発は一番最初にやめなきゃいけない。
 (福島事故から)5年経ちましたよ。ドイツはあの時原発ゼロを決めたが、まだ7基動いている。日本では今ここを含めて3基しか動いていないんです。みなさんの力ですよ。たいへんな状況ではありますが、みなさんはいい勝負をしていると思っているんです」
高江にも駆けつけた福島みずほ氏「基地建設にしても原発再稼働にしても、国策としてやっているのに、地方自治に委ねられている全国の県警がそれに協力しているところが問題ですよね。まさに住民潰し、弾圧じゃないですか」
 午前11時30分、福島みずほ参議院議員が到着した。絶え間なく参加者から声をかけられ続け、写真を撮られ、人気と信頼の高さを感じさせられる。
 休む間もなく、マイクを握った。
 「再稼働される時、伊方原発に来て、『おかしいぞ』と反対の声を一緒にあげたいと思い、まいりました。
 まず第一に、原発を動かす必要はありません。電気は足りています。
 2点目、耐震指針、基準地震動については根本的な批判が、大飯や高浜の差し止めの判決決定で出ています。この点は現在も争われていて、基準地震動に頼る安全基準は間違っていると思っています。
 3点目。避難ができるんでしょうか。できないですね。国会の中でも何度も取り上げてきました。佐田岬の先の人たちは、どこに逃げたらいいんでしょうか。フィルターをつけた待避所に屋内退避だと言いますが、もし、すさまじい放射性物質が放出された時、完璧に遮断はできません。
 ご存知のように、ここでかつてやった避難訓練で、天気は良かったけど海がシケていることを理由に船が出ませんでした。船が出なければ陸の孤島となって逃げることもできません。避難計画も十分でなくて、なんで再稼働ができるんでしょうか。
 熊本・大分大地震を引き起こした活断層が、ここ愛媛県までつながっています。地下の活動エネルギーが活発な中、伊方原発の再稼働は、他の原発以上に危険だと思います」

▲マイクを握る福島みずほ参議院議員

 話し終えて記者たちに囲まれた福島議員は、スピーチで触れた問題点が、なんら解決されていない中で再稼働されたことに、繰り返し怒りを表明した。
 「これだけたくさんの懸念が表明され、『危ない、危険だ、動かすな』と言われている中での再稼働は許せない。裁判も3つあるが、裁判で止める、規制委員会との論争の中で止める、国会の中で止める。そのことをしっかりやっていきたい」
 数日前まで沖縄県の高江に行っていたという福島氏に、IWJ記者がここ伊方と高江の共通点をたずねると、次のような答えが返ってきた。
 「住民が本当に反対している。高江の場合も県議会がヘリパッド建設中止を求める意見書を政府に出している。ここ愛媛県も、県民は再稼働反対の方が多いですよね。民意を無視して、なぜ再稼働なのか?
 危険性や問題点がしっかり指摘されているのに、それに対する回答もない。民意を無視して、機動隊や警察に守られて、まさに住民を威嚇しながらやる再稼働に何の正当性も道理もないと思いました。
 高江で思ったのは、これが日本の近未来になっちゃうんじゃないか、ということです。つまり住民が本当に反対している中を、全国から集められた機動隊が、暴力で襲いかかってくる。しかも法律を無視して。
 あれが日本の近未来になっては、絶対いけない。民主主義をちゃんと作っていかなきゃたいへんだし、民意や民主主義を叩き潰すようなことには一緒に声をあげなきゃ、と思いました。
 今日もたくさんの機動隊に守られながらの原発再稼働なんて、おかしいと思う。なんで広島や兵庫から来るのか。四国電力管轄内ですらない。
 県警って地方分権で分立していて、地方自治に委ねられているように、戦後作り直したんじゃないですか。基地建設にしても原発再稼働にしても、国策としてやっているのに、全国の県警がそれに協力しているところが問題ですよね。まさに住民潰し、弾圧じゃないですか。これから住民や住民運動に対して警察権力・国家権力などが襲いかかってくるという状況を作ってはいけないなと思います」
 最後に、地元の雇用や経済を原発に頼りきっている状況をどうすればいいと思うかと聞くと、福島氏は明確にこう答えた。
 「廃炉にするには何十年もかかるわけで、『廃炉ビジネス』が十分成り立つし、廃炉も極めて大変なので、そういうことに研究や雇用を確保する。それから現地の雇用の転換ということを、立地交付金などを違う形で使っていくということで、やっていけばいいと思う。
 今、万が一原発が事故を起こせば、その地域には住めなくなるわけで、私は原発再稼働は命から言っても経済から言っても割に合わない、理不尽だと思います」

▲午後12時、ゲート前での抗議集会は終了し、一行は町へデモに向かった

 米軍のために作る基地。米国から供与された原発。米国の利権がからむ施設を守るために、日本の機動隊が動員され、日本の市民の反対の声を力づくでねじふせてゆく。いったい何を、誰を、守っているのか。
 この国の主権者は誰なのか。日本国民ではないのか。根本的な問いが脳裏に貼りついて離れない。

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